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第二回 三次元スピーカー



 ● 昔の感動が甦った

 最初の試作が出来上がり、報告方々本家の光陽電気の河野社長の前で鳴らした時は凄く良い音がしました。何と言っても、三次元スピーカーの良い所は普通のスピーカーと違って直接音によって完璧に近い実像が作れる点です。スピーカーエンクロージャーには120度の角度で後方の内側と外側にスピーカーが付いていますので、鳴らし方のコツはカーテン等で背面をある程度デッドにしてやるだけでO.Kです。

 2チャンネルの場合ですと、回り込みの音、若しくは間接音でスピーカー後方に音像を作り出すものですから、その音には微妙なニジミが生じ音場を作り出すには物凄い難しいものがあります。しかし、三次元音場スピーカーの音を聴くと「私にはこれで充分満足だ!」とさえ思うのです。

 何と言っても生きた音楽がそこに存在しています。

 目の前で演奏しているのを熱く感じる事が出来るんです。

 とに角オーディオ的な音の事など、

 頭の中にこれっぽっちも無くなるのですから本当に不思議です。

 ステレオ屋を忘れて音楽に浸れる瞬間です。

 音楽をむさぼるように聴いた、青春期時代に戻れる時でもあるのです。

 『やっぱりフルレンジはいいネェ!、完成したら是非一つ分けて欲しい』と河野社長に言わせしめたほどの音だったのです。

 ● 持つべきは相談に乗ってくれるその道の達人

 「こんな時に島田貴光さんが居てくれたらなぁ・・・」。

 「わざわざ広島にまで来て助けてくれた事もあったよなぁ・・・」。

 島田さんの事を呼ぶのに私はいくつも言葉を使い分けておりました。

 ご馳走してもらう時は「先輩!」、又は「親分!」と呼びます。

 何かを教えてもらう時には「教授!」になります。

 久しぶりに電話をして驚かそうと思う時は「お兄ちゃん!」と呼んでいました。

 瀬戸内の生まれで私の郷土の先輩でもあったものですから、特に可愛がって貰いました。


 しかし、いくら悔やんでみても天国に居られるのではどうしようもありません。「あっ、そうだ!、高橋和正さんに相談してみよう」。島田さんと並んでその道の権威ですから、何か良いアイディアを貰えるかもしれない。思い立ったらすぐに電話です。

 「高橋さん?、三次元スピーカーの事で相談に乗って欲しいのですがお時間頂けませんか?」。

 『あぁ、いいよ!、明日でも明後日でも・・・』。

 「じゃあ、早速明日伺います」。

 ● 用意してくれていた3つのアイディア

 高橋さん宅へお伺いするのは1年ぶり位でしょうか。

 「お久しぶりです」。

 『いや〜、いらっしゃい!、カイザーさんの為に一晩じっくり考えたよ!』。

 と言って、3つのアイディアを見せてくれたのです。

 先ずその1つ目は、マッチングトランスを特注で作ってもらう方法。

 2つ目は同じユニットで4オームタイプと8オームタイプの物を探す方法。

 3つ目が洒落ていた。それは後ろのユニット2つを直列にし、フロントのユニットに8オームタイプのアッテネーターを挿入して、8〜16Ωに可変出来るようにした後、最後にパラってやるというアイディアです。

 これですとインピーダンスは5.4〜8Ωになり、あらゆるアンプに対応可能になります。それと何よりフロントのスピーカーの音量を微調整出来るという優れものです。部屋によって違う反響の差もかなり微調整が出来るはず。

 「それは良いですネェ!」。

 『じゃ、これから実験してみるか!?』。

 底ブタを外し、内部配線も外します。

 「半田ごてを貸して下さい」。

 『図々しい奴だなぁ、道具ぐらい用意してくるもんだよ!』。

 「その代わりと言っては何ですが、この近くでお茶菓子を買ってきました」。

 『いらねぇよ〜、そんな物は・・・』。

 ● 本格的オーディオの羅針盤に成り得る物

 これなら本格的オーディオの中でも、特に「音楽空間描写のリアリズム」を目指す人達のゴールを示唆する意味での羅針盤と成り得る物です。そういう役割を担う必需品として案内出来るだけのヒントと答えがこの三次元スピーカーの中には潜んでいるように思えます。マニア必携のツールとして案内していける物となれば、この三次元スピーカーは今後大きな反響を呼び起こす事になるでしょう。

 その帰り道、東名の青葉インターに入った所でA&Vビレッジの編集長に高橋邸での出来事を報告しました。この三次元音場スピーカーについては「大いに興味あり」と読者アンケートが沢山来ているので、編集長は完成が待ち遠しくてならないのです。

 これから色々と試行錯誤を繰り返し練り上げて行かなければと思っておりますが、この本が発売になる頃には一度エンゼルポケットで試聴会をしてみたいと思っています。どんな音に仕上がって行くのか読者の皆さんも楽しみに期待していて下さい。



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